『終夜』

今回の風姿花伝プロデュース作品は休憩含め3時間40分という長丁場。もともとの戯曲は深夜から夜明けまでをリアルタイムで描き7時間あるというものである。

 

もともとの長さを上手く四時間弱にまとめたなという感覚だが、この長さでこのくらいらダラダラとした演出ならもっと短くするか、原作通り7時間かけて上演すべきだと感じてしまった。

 

エドワード・オールビー『ヴァージニアウルフなんて怖くない』をモデルにしたのか、2組の夫婦がお酒の力で徐々に理性をなくしていく設定である。だが急に真面目になったり、酩酊になったりと、なかなか掴みきれない印象を受ける。しかもそれが不条理劇のように上手く機能しているわけでもなく、「あの設定は?」と感じてしまうこともしばしばあった。

 

2回の休憩があったが、休憩後は、その前の五行前くらいからやり直すという演出はなかなか面白い。他にもっとキリが良いところがあったが、ダラダラと続き切れ目のない長い夜を象徴していた。壁に落書きをするシーン、骨壷を破るシーンなどは、「だろうな」と感じてしまう既視感がある。

 

また、母親の葬式後という大枠がなかなか上手く機能していなく、これはただその設定を思い出させるだけの行為なのではないかと思わせるシーンも多々あった。

 

岡本健一の演技がやはり素晴らしく、お酒でなくもともと狂気じみている雰囲気を上手く醸し出していた。斉藤直樹の特に23幕の酩酊の演技は馬鹿にされているのかと思うくらい酷い。身体の動きが違和感だらけで、笑いもできなかった。しかし女優2人は最初から狂気じみているというか、掴めない役所を非常に上手く演じられていて4時間弱の舞台でも退屈することなく見ることができた。