9月8日(日)
今日は横浜STスポットで、東京デスロック『Anti Human Education』を観劇した。
現行の日本教育や家庭環境ではどのような人間が出来上がるのか。それを4人分見させてくれる。その後、筑波大学附属駒場中学校の平田先生の講義、そしてシニア向けに体の動き方を教えているというダンサーが身体の動かし方をレクチャーしてくれる。
まず、東京デスロック主催の多田淳之介があいさつし、「起立気をつけ礼」のレクチャーをする。私は客席の後方に座っていたのだが、ほとんどの観客がそれに従っていて面白かった。
舞台を見ていて感じたのは、特に義務教育は共産主義的なシステムなんだということだ。みんな平等に、頑張ったことは褒められる。結果は関係なく、周りに合わせることが美徳とされ、それにズレた感覚を持つ人、ついていけない人はすぐに排除され、いじめの対象になる。私自身の学生生活を振り返るいい機会になった気がする。
平田先生の講義では、つくこまの学校の特色と、演劇を利用した教育が紹介された。特に面白かったのは、座っている人を立たせるという、いわゆる椅子エチュードだ。見させてくれた映像は、医師と患者のおばあさんが椅子を譲り合い、直接座っている男性に話しかけることはなく、椅子を譲らせることを成功した。
そして最後の六時間目は、身体の不思議や正しい使い方がレッスンされる。面白かったのは、他人が動かしているのを見て、自分もイメージとして自己の身体を動かすことをイメージすると、そこの細胞の10%が動かされるということだ。
構成としてかなり面白く、1〜4時間目で現行の問題点、5時間目で教員としての当事者または現場の人としてそれを打開しようとしている、6時間目で凝り固まった現行教育や頭を身体を使ってほぐそうというものだ。
演劇という構成でこの作品を作ったことで新たに見えた現代社会があった。
その後、マックで『カリガリ博士』を見た。
ずっと見ないとといけないと思っていた作品であり、この映画が100年前に作られたとはととも驚きである。
全体が表現主義的、印象派的な美術で、話のプロットもかなり面白い。
ソワレは神奈川芸術劇場で、快快(ファイファイ)の『ルイルイ』を観劇予定だったが、台風の影響で公演中止に。
無事に初日の幕が開くことを祈っている。
9月7日(土)
今日はこまつ座『日の浦姫物語』(サザンシアター)を観に行った。
オイディプス王を日本の鎌倉時代に翻案した構成で、井上ひさし作品には珍しい救いようのないストーリーだった。ただその分、演出や言葉遊びでかなり笑えるように仕上げており、特にラスト近くの魚名が15年ぶりに会話をするシーンでは、井上ひさしの昔の作品の特徴である、言葉の音で遊ぶ場面が挿入されておりこのシーンを観れただけでもこまつ座を見に行けてよかったなと感じた。
「日の浦姫物語」を物語る夫婦が、枠として用意され、それがあったから、近親相姦モノを普遍的?なものに昇華しようと努力したのだと感じる。
役者はみんな素晴らしくて、朝海ひかるは新国立劇場『かもめ』のアルカージナとは正反対の清純な女性を年齢ごとに演じ分けられており、さすがだと感じた。
平埜生成は生の演技を始めてみたが、声も通るし、他の役者との協調もよくいい役者だと感じる。
最後は、井上らしい大円団で、なかなかのストーリーだがまあ救われたのか??のようなオチだった。
家に帰り、流山児★事務所『ザ・寺山』の映像を見た。
正直、難しくて、もしかすると寺山修司作品にもっと触れていれば楽しめたのかなと思う。たまに自分でも聞いたことのある寺山の言葉があったため、たまに「あーそう使うのか」と感じる時もあったが、それが「なるほど」「うまい」と思うには至ることができなかった。
ただ役者の方言、言葉の使い方が面白かったし、身体の使い方がなかなかアングラで楽しめた。
また、島次郎の美術が良かった。白を基調とし、中央に列車の線路があることで、何もない空間(やはり青森がモデル?)を表現する一方で、寺山作品の特徴でもあるモチーフを散りばめる態度が舞台上の小道具の配置や布の使い方に現れており興味深い。特にやはり布の使い方が面白くて、それがサーカスのテントや住まい、白紙の紙のようにも見え、島次郎が素材を大切にする美術家ということを直接知ることができた。
物語は難しかったが、演出が工夫されていて表面的には楽しめた。
次は戯曲を読み込んでみようと思う。
ちなみに今日は、野田地図『Q』の一般発売日。
運良く、サイドシートU25のチケットを購入できた。
9月6日(金)
今日はバイト。
昨日の京急線の事故のせ影響で、なかなか大変な通勤だった。
扇田昭彦の書いた『日本の演劇人 井上ひさし』をぼちぼち読んだ。
新劇でもアングラでもないからこそできたことがあるようだ。
「小説は本屋で立ち読みできるが、演劇は感激して初めて面白さがわかるもの、そのためこんな大きな賭けをする観客を満足させた時は快感だ。」
「悪い作品を提供するなら、初日をずらしたほうがいい。」(これについてはかなり問題があるとは思うが)
「暑さをどうしのいだらいいのかをバリ島人に教えたがるエスキモー人が必ずいるものだ。私はそのエスキモー人のお友達かもしれない。」
「現実の世界には、例えば否定というのはないと思います。人間は言葉で否定する方法を発明したわけです。」
などの言葉が印象に残った。
この人は話せば、書けば名言が残る人だ。
帰りの電車では「新・映像の世紀 グレイトファミリー」を見た。
ロックフェラーを始めとするアメリカの経済人にフィーチャーした特集であった。
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間に、アメリカ資本主義の夢と暗黒部分を映像によって少し知ることができた。
特にエジソンから逃れるために、ユダヤ人の映画人たちがハリウッドに逃れる流れがわかりやすく知ることができた。
貴重だと感じた映像は、
・関東大震災の様子
・アメリカの若者が第二次世界大戦に向かう様(日本ではその当時の映像を見たことがなかった)
その後、昨日の続き、パルコステージ、三谷幸喜作・演出、『紫式部ダイアリー』を見た。
ストーリーはよくある方に進んでしまったため少し残念。
1000年後の読者を想像して・・・みたいなもの。
ただ、最後に斉藤由貴演じる清少納言が紫式部ダイアリーを隠れて読むところで終わるのはなかなか良かった。
本編後のインタビューによると、あれは斉藤由貴が提案したとのこと。素晴らしい。
まあ、清少納言の悪口が書かれているのだろうが(史実でも、紫式部日記では清少納言の悪口がかなり書かれている)それだけを正としないのがなんともいい余韻を残す。
酒、バー、舞台美術などを駆使して約二時間の二人芝居の時間経過律をうまく調整していた。
9月5日(木)
今日は午前中に、NHK「新・映像の世紀」の第一次世界大戦を見た。
こんな映像があるとはかなり驚いた。
山のような死体、シラミを自ら取る兵士、残壕での様子、人体にハエが集る様などなど・・・
ショッキングという言葉では表現しきれない映像の連続で、映像の力や永遠性を感じた。
ただの記録映像によるドキュメンタリーでなく、映像自体が非常に貴重で且つ、物語性があるため一つの作品のように捉えるべきだと感じる。
非常に良質な番組で、今後も観れる分はチェックしていこうと思う。
その後、三谷幸喜作、斉藤由貴、長澤まさみ出演の『紫式部diary』の映像を半分鑑賞。
二人の女性作家が現代に生きていたら、という設定が秀逸でかなり笑える。
長澤まさみの天性のコメディエンヌ的な雰囲気が非常に作品にマッチしている。
それに応えている斉藤由貴の落ち着いている様子と、翻弄される様子がまた上手い。
続きが楽しみ。
9月4日(木)
今日は1日バイト。
帰ってからは、昨日のつづき、『キレイ〜神様と待ち合わせした女』を最後まで見た。
女性の生理現象をケガレ、キレイという人物で表現していた。
1幕が戦争中心で進んでいたが、2幕はケガレ、ミサという女性にスポットを当てたシーンが多く、大河ドラマ的な大きな流れと、小さい個人の比率が非常に巧妙だった。
特に女性の生理現象を前面に出したことによって、その小さい個人の中で起こる生理現象が宇宙的な広さを持つものにも思える。
ケガレの連れ合いが宇宙に旅立ったことからも、小宇宙的なものから実際の宇宙の世界にまで昇華されている作品だと感じた。
ミュージカルとしては歌が少なく、音楽の力を感じるような展開はなかったが、ここぞという盛り上がりでうまく音楽を入れており、簡易な音楽劇としてみると楽しめると感じる。
9月3日(火)
午前中は昨日の続きで映画「マンマミーア!ヒア・ウィー・ゴー」を最後まで見た。
若い頃のドナと、現在のソフィが重なり合う演出を多く使い、2の映画を作った意味を感じた。
若いドナを演じたリリー・ジェイムズと、ソフィを演じたアマンダ・セイフライドの演技、歌唱が秀逸。
現在と過去をうまく組み合わせた撮影に加え、豪華なキャストと、前作に続く素晴らしいアバの楽曲で素晴らしい作品だった。
午後は学校に行き、色々と本を借りる。
夜は渋谷TSUTAYAで借りた『キレイ〜神様と待ち合わせした女』を途中まで鑑賞。
素晴らしい。
キャストが豪華に加え、プロットがよくできている。
まだ途中までなのでストーリーについてはまだわからないが、戦争や病気をテーマとしながら笑える部分が多く、全く長さを感じない。
今年の12月の上演も楽しみだ。
9月2日(月)
今日は一日アルバイト。
行きの電車で昨日から読み進めていたアーサー・ミラー『転落の後に』を読む。
途中から作品の雰囲気がガラッと変わり、ミラーの表現方法の幅の広さを感じる。
マッカーシズムを始めとする大きい事件と、女性関係に右往左往する主人公の小ささが綺麗な対比になっており、印象派的な表現とは言われる作品であるが、読みにくさは感じない。
自伝的劇作の作品ということで、ミラーの為人を少なくとも知ることができた気がする。
夜はこまばアゴラ劇場にて、青年団リンクやしゃご『アリはフリスクを食べない』を観劇。
障がい者を主人公にした、なかなか踏み込んだ作品。
かなり考えさせられる部分が多かったが、笑いのポイントも多く楽しんで観れた。
笑いのポイントといっても、障がい者のことを笑っているのではないか、というフィルターが入り、そこも考えさせられる。
「障がい者と性」についても触れられ、とても興味深いテーマであった。
演出もよく、リズミカルに展開していくため見やすい。
とてもいい観劇体験だった。
その後、映画『マンマミーア!ヒア・ウィー・ゴー・アゲイン』を半分みる。